小さな運送会社の元専務がトラック業界を謎解き

運送会社を色々見てきて、トラックも色々乗ってきました。4トンから始まり、大型トラック、大型トレーラーのお仕事もやってきて、それにも飽き足らず小さな運送会社を起業しました。そんな小さな運送会社の元専務が運送業界の疑問や就職、転職に役立つ情報をお届けします。

運送業界で働くなら大型トラック免許とけん引免許は取得しておこう

これから大型トラックの免許を取得して、運送業界で働こうと考えているなら、けん引免許も取得しておくことが得策です。

大型トラック運転手の場合は、求人募集もそれなりに多く、就職、転職する側が選ぶことができます。

ところが、大型トレーラー運転手の求人募集は、地域によって経験者のみしか募集しないところがあります。

運送業界で長く働こうと思うなら、トレーラーには乗ってみたいものです。

それなのに、経験者のみの募集しかないと、未経験者はいつまでたってもトレーラーに乗ることができません。

そんな時、大型トラック運転手として入った会社にトレーラー運転手の空きが出来たら、未経験者でもかなりの確率でトレーラー運転手の道が開けると思いませんか?

一度トレーラー運転手としてデビューすれば、それは立派な経験者としてのデビューです。

そんなチャンスを逃さない為にも、大型トラック免許とけん引免許はセットで取得したいですね。

今回は、トレーラーについて、その種類や特徴、運転のコツをご紹介します。

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大型トラックからトレーラーへのステップアップに必要なトレーラーの種類

けん引免許を必要とする『トレーラー』は2種類あるのはご存知ですか?

すでに運送業界で働いている方や、トラックに興味のある方にとっては常識ですが、もちろん全くご存じない方もいると思いますので、ここから詳しくご説明します。

セミトレーラーとは

トラクタヘッド(人が乗る方)のカプラに、トレーラー(荷物を載せる方)のキングピンを噛み合わせるタイプです。

カプラとキングピンがしっかりつながる事でトラクタヘッドはトレーラーを引っ張ることが出来ます。

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セミトレーラーは国内で最も普及していますが、その理由は、道路事情と荷物の種類の多さです。

日本の道路と言えば狭く曲がりくねったところが多いのが特徴で、そういった場合は、フルトレーラーの様に全長が長く、曲がりにくい性質のものより、セミトレーラーの方が走りやすいです。

また、運ぶ荷物はさまざまで、コンテナなタンクローリー、木材や鉄鋼などいろいろな形のものがありますが、セミトレーラーであれば、トレーラーがどんな形のものでもキングピンさえ付いていれば連結して運ぶことが可能です。

この様にさまざまな用途で使用されているため、多く普及されているため、みなさんが一般的に良く見かけるトレーラーはセミトレーラーがほとんどだと思います。

 

セミトレーラーのトラクタヘッド部分だけでは荷物を運べない様に、トレーラー部分だけでも自走する事ができません。

トラクタヘッドとトレーラーがセットで初めて荷物が運べる仕組みになっています。

 

この仕組みを利用して、セミトレーラーは船を使って荷物を運搬する場合、トラクタヘッドとトレーラーを切り離し、荷物を乗せたトレーラー部分のみ船で運ばせ、現地で別のトラクタヘッドがトレーラーを連結して目的地へ運ぶという仕組みを採用している事があります。

それは、トレーラー部分のみ船に乗せる事で、運転手を船で長時間拘束する事が無くなり、疲弊させることなく荷物が運べるという点と、船への支払いとなる運賃はトラクタヘッドが無い分かなり安くなるという点が好まれています。

 

フルトレーラーとは

引っ張る方のトラックは普通の大型トラックの様に見え、その後方にあるピントルフックに、トレーラーのルネットアイを引っかける事によって引っ張るトラックも引っ張られるトレーラーも荷物を運ぶことができます。

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フルトレーラーとは1台の貨物車の後ろに、自走は出来ない単体の荷台がピントルフックとルネットアイで連結されています。

 

単体の荷台には『ドリー式』と呼ばれる2軸(横から見たら荷台のタイヤが前後で2つ)が採用されている事が多く、このドリー式によってバックが非常に困難なため、日本ではあまり普及していません。

 

近頃はドリー式とは違う、1軸を採用した『センターアスクル式』が注目されており、このセンターアスクル式はセミトレーラーの様に扱う事が可能で、ドリー式に比べると格段に後進(バック)がしやすくなります。

今後はセンターアスクル式が多く世に出回るかもしれません。

 

フルトレーラーの良い所は、引っ張る側も荷物を多く運べるという点です。

単体の荷台は無くても荷物が運べるということは、宅配業の様なシーズンで荷物の量が大幅に変わる様な場合に重宝されます。

シーズン中はトレーラーを接続して大量に運び、シーズンオフで荷物が激減したらフルトラクタのみで運ぶという運用が可能になる事が好まれています。

 

名前から車体は何となく想像のつく形だと思いますが、連結部分の名前まではご存じない方が多いのではないでしょうか。

この位の情報でも、知っている事でトレーラーへの興味がわいてくると思います。

次は、トレーラー運転手として必要な運転技術をご紹介します。

 

けん引免許を取得するためにトレーラーの運転技術を先に覚えよう

大型トラックは、横幅も広く全長も長いですが、トレーラーはそれだけではありません。

横幅はもちろん、全長も大型トラックに比べるとさらに長くなり、尚且つ車体が折れるという特徴があります。

この折れるという特徴はトレーラー以外ではほとんど経験できません。

そんなトレーラーを運転するための技術は経験以外で身に着ける事は出来ませんが、頭の中でトレーラの動きを想像できるだけでもかなり運転に違いが出てきます。

けん引免許を取得するために、トレーラーの動きをしっかり頭に覚えさせてしまいましょう。

トレーラー運転のコツをつかもう

一般的に良く見かけるトレーラーの全長は、約10m以上あるもの、中には20m近いものが多く走っています。

ただすべてそうではなく、トレーラーの長さは運んでいる荷物の種類で変わってきます。

ベテランのトラック運転手でさえも運転が難しいからトレーラーには乗りたくない、と言わせる位特殊な乗り物です。

しかし、そんな特殊な乗り物でも、コツさえつかめば大丈夫!そのコツしっかりお伝えします。

 

1.直進

直進は簡単です。だれでもできます。ただし、トレーラーを常に引っ張っている事を忘れてしまわない様にしないと、走行からの停止、停止からの発車時は、1テンポ遅れてトレーラーの動きが伝わってきます。

また、トレーラーの全長を想定せずに狭い道に入ったり、ちょっと避けようとしてハンドル無造作に切ると、トラクタヘッドは避けたつもりでも、トレーラーが障害物に激突!なんてこともありますので、直進だからといって無造作なハンドル操作は禁物です。

2.左折

たまに交差点でトレーラーが交差点を大回りで左折してきたりするのを目撃したことはありませんか?

トレーラーの左折で最も神経を使うのは『内輪差』で、左折する時は交差点に侵入し内輪差を計算しながら前方に深く進み、内輪差クリアと同時にハンドルを切る必要があります。

左折時に確認すべきは、左折した先に停止している車両が左折の邪魔をしないか、曲り始めたら巻き込み確認が困難になるので、左折行動の前に巻き込み確認をしておく必要があります。

3.右折

左折に比べると右折は余裕がありますが、内輪差によって右折先の停止車両にぶつけない様に十分注意が必要です。

まれに、右折したい先が狭い場合は、トレーラーの侵入によって前後左右に進めなくなる車両が発生しないとも限りません。

トレーラー運転手として、曲った先の車の停止位置から先読みして誘導できるくらいの観察力が必要です。

4.後進(バック)

トレーラーの免許取得時にメインとなるのは、トレーラーの運転で最も難しいと言われるバックです。

もちろん、通常のお仕事でトレーラーに乗っていたとしても、バックは運転手としてのレベルを見極められる技術です。

トレーラーの特徴は、連結部分で折れるという点、バック開始時は、通常車のバックとは逆の方にハンドルを回すことになります。

例えば、左後ろの車庫にトレーラーを入れたいと思ったら、まずはハンドルを右に切る。

車体が連結部分よりうまく折れてくれたら、車庫にトレーラーが入り込む様にトラクタヘッドでゆっくり押す。

車庫にトレーラーが上手く入り始めたら、折れすぎる前にハンドルをゆっくり左に戻していきます。

バック時に注意すべきは、折れすぎか折れなさすぎのどちらかです。これは想像しにくいので、トレーラーに見立てた消しゴムで、余ったもう一つの消しゴムを斜めに押すと何となく理解できると思います。 

 

トレーラー運転手になる為のけん引免許の種類は

トレーラー運転手になる為には知っておきたい、免許の種類を簡単にご説明します。

まずは、けん引免許を取得して、トレーラー経験者になる為の道を整備する必要があります。

それには、トレーラーの種類を知っておくのは大切です。

けん引免許

けん引免許は、けん引自動車で750kgを超える車をけん引する時に必要な免許です。

けん引自動車とは、けん引するための装置を備えた車両です。

また、総重量が750kg以下の車両や、故障車をロープ等でけん引する場合には、けん引免許は必要ありません

けん引二種免許

けん引二種免許は、乗客を乗せて走るトレーラーバスなどを運転するために必要な二種免許です。

トレーラーバスで、唯一見れるかも知れないのが、西東京バス株式会社が運行する『つるつる温泉線機関車バス(青春号)です。その他の場所で普段は見かける事はありません。

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※運行状況は事前に西東京バス株式会社へ確認した方が良さそうです。コチラ→西東京バス

 

あのバスはけん引二種いるのかな?と思った方は連接バスを想像していませんか?

通常の路線バスは、お客さんを乗せるので大型二種免許が必要です。

その路線バスが2台連結されているような全長がすごく長いバスが連接バスですね。

意外と間違えやすいのですが、連接バスを運転するのに必要な免許は大型二種免許です。

連接バスは連結部分を切り離して走行する事が出来ないので、けん引というものに含まれません。

ただし、運転技術自体はけん引と同等の技術を要するので、会社としてはけん引免許所持者を乗務させているようです。

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まとめ

今回は、トレーラーの種類やその特性についてご紹介しました。

運送会社で働きたいとお考えでしたら、大型トラックの免許だけではなく、けん引免許も持っておくに越したことはありません。

トレーラーを所持している運送会社への就職や転職をする時に、けん引免許は大型免許より優遇されます。

トレーラー運転手はなかなか会社を辞める事がありませんので、じっくり待つ必要があるとは思いますが、チャンスは必ずあると思います。

そのチャンスを逃さない様に、これからけん引免許に挑戦してみてはいかがでしょう。

けん引免許を持っているという方は、トレーラーを所持しているきれいな会社に転職してみるのも良いかも。

トレーラーの空き待ちの方は、早く定年退職が出ることを応援しています。