気持ちよく晴れた休日にドライブに出発!
目的地までの移動にはやっぱり高速道路が便利ですね。
と言う事で、インターチェンジから高速道路に合流し、少しばかり急ごうと追い越し車線からごぼう抜き。
と思ったら、追い越し車線に大型トラックがのんびり走っているではありませんか。
もちろん走行車線にも大型トラックがのんびり走っているではありませんか。
オイオイ、2台並んで走ってたら、追い越しできないじゃないか!邪魔だ邪魔だ!
と、思ったことがある方は、多いのではないでしょうか。
なんで、遅いのに追い越し車線走るの?なんでさっさと追い越して車線を譲らないの?
今回は、そんなイライラ疑問にお答えしたいと思います。
大型トラックの速度はスピードリミッターで90kmに抑制される
大型トラックが高速道路で、普通自動車から見て非常に遅く感じるのは『スピードリミッター』の速度制御によるものです。
車の事に詳しい方は分かるかもしれませんが、スピードリミッターとは、最高速度の上限を設定して、それ以上速度が出ない様に制御する機械の事です。
スピードリミッターが大型トラックに設置される事になった経緯はというと。
①.運輸技術審議会(平成11年6月)
大型車等を対象とした速度制限装置は、技術的には開発済みの装置であり、事故防止等の観点から一部先進国において一定の車種に装備を義務づけている例もある。
このような点を勘案しつつ、規制の導入、経済的な誘導策の導入等様々な角度から関係者間で早急に検討する必要がある。
この審議会では、一部先進国(EU:ドイツ・フランス・ベルギー)では、すでにスピードリミッターを義務化して、大型トラックの事故を減少した経緯があるので、日本でも導入すべきでは?という話し合いが行われました。
②.大型貨物自動車事故防止対策検討会(平成11年8月~平成12年6月)
平成11年6月の運輸技術審議会答申で指摘された速度抑制装置の義務付けは、高速道路における制限速度違反による重大事故発生防止効果、燃費向上の環境面での効果などが期待されることから妥当である。
なお、速度抑制装置の義務付けに当たっては、環境性能が高い新車への代替の遅延の防止、貨物自動車運送事業者の競争条件の平準化などの観点から使用過程車も対象とすることなどに留意する必要がある。
この検討会では、スピードリミッターを設置するべき理由として、高速道路における速度違反による重大事故を防ぐ事が最大の目的であり、それにより燃費向上になり、エコだねと言う事ですね。
また、スピードリミッター設置を義務付けの対象車両を、新車に限定してしまうと、買い直しとかの理由で間違いなく間に合わない運送会社も出てくるので、現在使用中の大型トラックにもスピードリミッターの設置を義務化して、遅延を徹底してなくそうとしているわけです。
③.新総合物流施策大綱 閣議決定(平成13年7月)
大型トラックの高速道路における速度超過による事故を防止するため、平成15年9月から速度抑制装置の装備を義務付ける。
この閣議決定によって、平成15年9月からはスピードリミッターを付けていないと違反になります。
道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号) 等を改正し、大型貨物車に対する速度抑制装置(最高速度90km/h)の装備の順次義務付けを実施。
この閣議決定によって、大型トラックの最高速度は90kmまでと決められてしまいました。
実際にスピードリミッターの義務化が決定した、平成15年9月から平成19年8月までの高速道路における、事故発生件数を評価した結果、平成17年の大型貨物車の死亡事故件数は、平成9年から平成14年の平均件数より約40%低減していて、その効果はあった様ですね。
出典:国土交通省(スピードリミッター効果・影響評価)
この様に、大型トラックのスピードリミッターが義務化となり、90kmという最高速度が統一されたことによって『高速道路での並走』が発生するようになりました。
大型トラックの最高速度は同じなのになぜ追い越そうとするのか
大型トラックの仕事は、荷主さんから預かった荷物を決められた日時に届ける事が最大の使命です。
特に時間にはものすごく気を使います。延着なんてもってのほかです。
ただ、普通乗用車から見ると、高速道路を走る大型トラックは邪魔で仕方ありません。
なぜなら、遅い大型トラック同士で抜きあいをして、挙句の果てになかなか抜けず並走してしまうからです。
なんで抜けないのに追い越そうとするのか、その理由を紐解いてみましょう。
①.スピードリミッターは90kmジャストではない
スピードリミッター(速度抑制装置)は、90kmぴったりで設定されているはずなのですが、実際にメーターを見ると、89kmのものあれば、95kmまででるものもあります。
あくまでもスピードリミッターは機械なので、90kmに設定していたとしても、メーカーや性能で速度のズレは発生するものです。
高速道路で走行車線を走っていると、89kmの大型トラックに95kmの大型トラックは自然と追いついてしまいます。
とすると、95kmの大型トラックは追い越そうとします。が、そのスピード差はわずか6kmです。
その差6kmで、全長12mの大型トラックを抜こうとすると、なかなか抜けないのが原因の一つです。
②.積んでる荷物の重さで速度差が発生
スピードリミッターが90kmで設定されていても、重たい荷物を積んでいると最高速度の90kmまで到達できない場合があります。
それは、高速道路には微妙な上りや下りがある事が多く、重たい荷物を運んでいると、微妙な上りで時速はかなり落ちてしまいます。逆に下りになると最高速度の90kmを超える速さで走る事が出来る様になります。
そんな時に、軽い荷物を運んでいる大型トラックは、重い荷物を運んでいる大型トラックをフラットな道では追い抜く事が出来るので、追い越し車線から追い抜こうとしますが、追い抜く前に道が下りになると、重い荷物を運ぶ大型トラックの速度が上がり追い抜けなくなります。
これは逆もあり、重い荷物を運んでいる大型トラックは、下りで抜きにかかり、フラットな道や上りになると抜けなくなるどころか、抜こうとしていたトラックから逆に抜かれる事も多くあります。これも並走の理由の一つです。
③.スリップストリームの速度差
高速道路で大型トラックが前のトラックにべったりくっついて走っている光景を見たことないでしょうか。
これは、前のトラックを煽っているのではなく、同じ最高速度で走っている可能性が高いです。
乗用車同士で、前の車にべったりくっつくと、煽り運転でトラブルになったり、検挙されたりしてしまうかもしれません。
さらに、前の車が急にブレーキをかけたりするかもと、はたから見てるとドキドキします。
しかし、トラックの運転手は、トラックの動きというか、挙動というか、運転手の考えが分かるので、べったり後方にくっついても煽られていると感じたり、急にブレーキを踏んだりする人はまずいません。
べったりくっついている大型トラックは、前のトラックを抜く準備をしていると思ってください。
べったり前の車にくっつく事で、前方の空気抵抗が無くなり、空気抵抗をもろに受けている前のトラックより少しばかり速度が速くなります。
その微妙な速度差を利用して、同じ速度域で走るトラックを抜きにかかります。
そうです、お気づきの方も居るかもしれませんが、抜きにかかった時点で同じ空気抵抗がかかりますので、これまた微妙に抜けません。この時の速度差は1kmから2km程度だと思います。
その速度差では、12mの大型トラックを抜くのは至難の業です。これも並走の理由の一つです。
この様に、微妙な速度差を利用して、大型トラックは追い越しをかけています。
この微妙な差は、スピードリミッターの性能、荷物の重さ、道路の上りと下り、空気抵抗などで作られています。
こういった条件の中で追い越しをかけているので、その条件が少しでもずれると、追い越そうと思ったけど追い越せずに、結果並走してしまうという事になっています。
なら、初めから抜かなければいいのでは?と思うかも知れませんが、冒頭でもご説明したとおり、トラック運転手のお仕事は、預かった荷物を指定の日時に届ける事です。
なので、少しでも早く配送先に到着して、指定日時を待つ!位の勢いで大型トラックを走らせています。
床が抜けるくらいアクセルを踏み、遅い車はドンドン追い越し、最高速度限界で走り続ける事を最も重要視しています。
もし、高速道路で並走しているトラックを見かけたら、急いでるのかなぁと大きな心で見てあげて下さい。
決してイライラして煽ったり、クラクションを鳴らしたりしない様にしてください。検挙されちゃいますから。
最後の余談
大型トラックが高速道路で並走してしまう理由をご紹介しました。
大型トラックが前のトラックにべったりくっついている時は、追い越しをかける準備をしているとご説明しました。
乗用車でそんな光景を見かけたら、近いうちに後ろ側のトラックは追い越し車線に出てきます。
後ろ側のトラックはそのタイミングを計りながら走っていますので、そのタイミングと同時に乗用車に抜かれると自分が追い越し車線に出れなくなります。
それを阻止するために、トラックが乗用車の追い越しをブロックする事がありますので、十分にトラックの動きを見ながら追い越しはかけるようにしましょう。
トラックと乗用車の事故は悲惨な事が多いので、余裕を持った安全運転を心がけて下さい。