小さな運送会社の元専務がトラック業界を謎解き

運送会社を色々見てきて、トラックも色々乗ってきました。4トンから始まり、大型トラック、大型トレーラーのお仕事もやってきて、それにも飽き足らず小さな運送会社を起業しました。そんな小さな運送会社の元専務が運送業界の疑問や就職、転職に役立つ情報をお届けします。

大型トラック運転手不足で悩む運送業界は自業自得の結果では?

ちまたを賑わすトラック運転手不足。

近頃は、テレビやインターネットのニュースでも取り上げられるようになりました。

インターネット通販の普及が目覚ましく、輸送量自体が増えて運送会社の業績もアップしているのに、なぜなのでしょう。

 

普通に考えると、企業の業績が上がると自然と仕事量が増え、それに対する人の増員は必要不可欠です。

と言う事は、企業は求人募集を出し、人を集める事が必要になります。

 

輸送量自体が増えた運送業界は、もちろん人手が不足してしまうので、求人募集する必要がありますね。

それなのに、運送会社のトラック運転手不足を起こしてしまうのは、なぜなのでしょう。

求人募集をしていないから?ではありませんね。

 

求人情報を検索してみると、トラック運転手の求人募集はたくさん出ています。

と言う事は、トラック運転手になろうとする人が、明らかにいないと言う事になります。

 

なぜトラック運転手になろうとする人がいないのか、なぜ人手不足になってしまうのか。

なにかしら原因がある事は間違いありません。

 

その原因を探るべく、トラック運転手が不足してしまう理由や、トラック運転手になろうとする人がいない理由を調査しましたので、ご紹介します。

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大型トラック運転手不足の理由は運送業界全体に問題あり

トラック運送業界は、新規参入による規制緩和が1990年に実施され、その時に事業者数が急増したのはご存知でしょうか。

新規参入事業者が増えた運送業界は、小さい会社同士の過当競争が起き、安い運賃で荷物を運ぶ事業者が多く存在するようになりました。

 

トラック運転手の給料体系は、安い基本給にプラス運賃の何パーセントと言う計算方式が主流の為、過度の運賃競争によってトラック運転手の給料も自然と下がっていってしまいました。

 

トラック運転手の魅力は、肉体労働の中でも給料が高いという点です。

それなのに、給料が下がってしまったトラック運転手に、なろうと思う人がいるわけがありません。

その時の求職者は、同じ肉体労働で、給料もトラック運転手とさほど変わらないと言われた、建設業へ進んで行ってしまいます。

 

ここ数年でも、全国のトラック運転手の人数は80万前後と横ばい状態になっているので、慢性的な人手不足はいまだ続いているという事になります。

さらに、改正道路交通法などによる自動車免許の区分が追加され、運送業界に魅力を感じなくなってしまった若い方達が、いっそう離れてしまっているという現実も考えなくてはなりません。

若手が増えない運送業界は、トラック運転手の高齢化が進み、今では40代以上が占める割合が多くなってしまっています。

 

その一方で、輸送量の増加はとどまる事を知りません。

 

若者はもちろんの事、中高年層も家に直接届く便利さと、さらに値段の安さも加わって、インターネット通販が主流となって業績を伸ばし続けています。

インターネット通販の魅力は、何でも揃っていて、1個からでもすぐに届くと言った利便性にあり、小口の荷物もこれに比例して増え続けています。

 

この事により、トラック運転手の人手不足に拍車をかけ、さらに深刻な状態に陥ってしまっています。

 

過酷な労働条件がトラック運転手不足の理由のひとつ

トラック運転手の仕事は、基本的に長時間高速されるのですが、それに見合った給料が支払われず、労働条件が過酷であると言われることが多くあります。

 

確かに、他の業種と比べると、トラック運転手の仕事は、運ぶ荷物の種類や内容、輸送する距離の違いで、労働時間は一定でありませんし、どちらかと言うと長時間労働が占める割合の方が多いです。

 

多くの方は給料をを時間給で考える事が多いのですが、長時間拘束されるトラック運転手の労働時間を時間給にして考えると非常に低く、平均年収も他の産業に比べると、少し低く設定されていると思われます。

 

これが、トラック運転手に魅力を感じない理由であり、慢性的なトラック運転手不足の理由の1つと考えられます。

 

過酷な労働条件と言われる理由がもう1つ。

 

それは、荷物の積込み、荷下ろしの方法です。

トラック運転手の仕事は、ただ運転するだけではありません。

荷物をトラックに積み、運んだ先で荷物を下ろすという作業が必ず付いてきます。

この荷物の積込みや荷下ろしは、いまだ手作業で行われることが多く、フォークリフトなどでパレット積みと言うのは少ないのが現状です。

 

特に荷下ろしに関しては、そのほとんどが手作業で、軽い荷物であればその数場膨大で、時に重い荷物もあり、体にかかる負担は小さくありません。

 

そのため、荷下ろしに時間がかかってしまい長時間労働となってしまいます。

さらに、次の仕事が待っているので、寝る時間を削って荷物を積込みに行き、休憩する時間を削ってまでも運転し続けた結果、疲労が重なり体調を崩したり、居眠り運転などを誘発して、事故を起こしてしまうと言う最悪の結果となる事もあります。

 

この様な労働条件が過酷と言われ、トラック運転手が敬遠される理由と考えられています。

 

トラック運転手不足の理由は運転手の責任が重すぎる

運送会社によってトラック運転手の責任が非常に重い所があります。

特に多いのが、トラック運転手が事故を起こした時の損害賠償責任で、事故を起こした理由に関係なく、壊してしまったトラックの修理費用を請求する会社があります。

 

また、違法駐車による罰金や、過積載による罰金など、交通違反による罰金もトラック運転手の責任になる事があります。

 

違法駐車と言っても、荷物の積込みや、積み下ろし場所がそういった駐車違反場所である事もあり、違反をしない様に離れた場所に停止したら、仕事もはかどらない上に、体力的にも相当負担がかかります。

また、日ごろの長時間労働による疲労で、仮眠をしないといけない場合もあり、そんな時に違法駐車で罰金を支払わなければならなくなった時は、なんのために仕事をしているのか分からなくなります。

 

過積載なんてトラック運転手がどうこう出来るものではありません。

会社が荷主さんにしっかり説明しておくべき事で、過積載による違反をトラック運転手が負うなんて事があってはならないのですが、現実に全てトラック運転手が責任を負っている事があります。

 

この様な事をしているのは、一部のブラック企業と呼ばれる会社です。

ただし、このようなブラック企業が多いのも運送業界の特徴です。

 

この様にトラック運転手への責任を課す事が現実となっているので、運転手不足は解消されないと考えられます。

 

トラック運転手不足の理由の1つは若者の車離れ

昔々その昔は、トラック運転手と言えば、若者があこがれる職業のひとつでした。

時代は流れ、21世紀ともなれば、その流れは一変し、若年層は車自体の興味を失ってしまっています。

それは、不景気による若年層の所得の減少を引き金に、自動車を維持する費用の捻出が難しくなってきて、自動車を持つこと自体を敬遠したことによるものです。

 

それでも地方は、公共交通機関を使って日常生活を送る習慣が余りないので、一家に一台は車を所持している様ですが、それはあくまでも地方で、少し都会の方へ行くと、若年層どころか中高年層も車を不要と考えている方も多い様です。

 

車への興味を失ってしまった若年層にとって、トラック運転手と言う仕事に興味を抱くわけがありません。

仕事が無くて仕方なく、たまたま求人情報を検索してたらヒットしたから位の興味です。

それなのに、その仕事が過酷な労働条件であれば、間違いなく応募はしないでしょう。

 

この様な興味の無い方を引き込むには、興味を引く労働条件に早急にする必要があります。

 

 

この様に、トラック運転手不足で悩む運送業界には、人手不足を慢性化させる様々な要素があります。

その中でも、荷物の積込み、積み下ろしに関する部分を変える事はかなり難しいと思われます。

ならば、その負の要素を打開できるほどの正の要素を増加させるべきですね。

 

【 運送会社に求める要素 】

①.給料:労働時間に見合った対価である事が必要です。

②.休日:週休2日は無理でも丸1日は必須。

③.責任:責任感を求めるのみで、責任はとらせない。

④.融通:甘やかすのではなく、会社に柔軟性が必要です。

 

これからのトラック運転手は、細身のスラットした男性や、お子様を抱える女性も増えてくると考えられます。

なので、どんな方でも柔軟に雇い入れる環境の整備が必要になりますね。

 

これからトラック運転手を目指す方は、少なからずこの要素は応募したら聞いておきましょう。

少しでも早く人手不足を解消した運送会社は、どんどん求人情報から消えていくので、優良な運送会社の求人が無くなってしまう前に、色々応募して話を聞いてみる事で目指すべき場所が見えてくるはずです。

 

最後に

大型トラック運転手不足は、これからも続く事は間違いないでしょう。

運送会社の求人情報が無くなる事は有りませんが、その多くの求人の中から自分に合った優良な運送会社を探すのは、なかなか大変な事です。

色々な運送会社を見て聞いて、情報をかき集めて、総合的に判断する事がとても大切です。

簡単に言うと、安定を求めるなら大手の運送会社を目指し、快適さを求めるなら中小の運送会社を目指してみて下さい。

 

これから運送業界は様々な改革が行われていくはずです。

そういった改革が良い方向に進み、ブラック企業の無い業界に少しでも早くなってもらいたいですね。