トラック運転手になりたくて、運転免許を取得して、念願のトラック運転手になった方は誰しも考えたことがあるはずです。
自分のトラックを購入して、自分で仕事を受けて、売り上げは全て自分のもの。
そうです!個人事業主!社長さんです。
しかし、現実はそう甘くなく、トラック運転手としてガンバッテ働いたとしても、年収はソコソコもらえるかもしれませんが、トラックを購入するだけの資金をためるのは簡単ではありません。
個人で仕事を受けるなら、2トン車や4トン車では仕事も無ければ運賃も安い。
それなら、軽貨物で宅配業でもそんなに変わりありません。
ですので、個人で購入するとすれば、大型トラック、またはトレーラーヘッドです。
昔話になりますが、景気の良かった時代、海上コンテナ輸送が非常に儲かっていた時代がありました。
その時代に、トレーラーヘッドだけを購入し、海上コンテナ輸送を行っている会社から仕事をもらう方が多くいました。
その時の海コン輸送は、物量も多く、運賃も非常に高く、個人でやらないともったいない位でした。
今は、そんな時代の影も形もありません。
物量が減った事もありますが、運賃の下落でトレーラーを動かせば動かすほど赤字になるほどの価格競争となり、今となっては、個人でトレーラーヘッドを所持して仕事を受けている方は、ほとんど見かけなくなりました。
それは、大型トラックも同じことで、自分で大型トラックを購入して、運送会社に所属はしているけど、個人として仕事をされている方は、ほとんど見なくなりました。
そんな景気の悪い中、大型トラックを購入して、1台から小さいながらも運送会社を設立した方法をご紹介します。
運送会社を設立するために最も難しい準備は資金と資格所持者
トラックで運送をする事を一般的には『一般貨物自動車運送事業』と言います。
ただ単に、自分の会社の荷物を自分の会社が所持するトラックに乗せて、自分の会社の支店に運ぶだけであれば、一般貨物自動車事業とは言いません。
一般貨物自動車事業というのは、『他人から依頼を受けた荷物を運び、運んだ事に対するお金(運賃)をもらう事業』の事です。
要は、運んだ事に対してお金を払うか、払わないかと言う事ですね。
一般貨物自動車事業とは別に、『特定貨物自動車運送事業』『貨物軽自動車運送事業』の区分が貨物自動車運送事業法に定められており、3つの区分に分かれています。
特定貨物自動車運送事業とは、荷物を依頼してくる会社が1社のみ場合で、依頼主の為の荷物を運ぶためだけに作られたトラックなども有ります。
貨物軽自動車運送事業とは、軽貨物自動車を使用して荷物を運ぶ場合で、大手宅配事業者などの荷物を運んでいる事が多いです。
個人でトラックを購入し運送会社へ所属
運送会社の社長の多くは、2代目や3代目などの引き継ぎが多い様ですが、0からスタートした方も少なからずいます。
そういった方の多くは、どんな理由で運送会社を設立するまでに至ったのでしょう。
運送会社でトラック運転手として働いている仲間同士で設立
自社の配送部門をアウトソーシングするために設立
個人トラックを持ち込みで所属していた運送会社に勧められ設立
私は、個人トラックを持ち込んでいた運送会社から勧められ、荷主さんからも勧められたので独立と同時に会社設立に挑戦しました。
その前に、個人トラックとはいったいどんなタイミングで持つようになるのでしょう。
所属する運送会社が倒産と同時に購入
荷主さんと仲良くなって定期便を受け持ったので購入
知り合いの運送会社の社長が誘ってくれたので購入
私は、所属する運送会社が倒産すると聞いた瞬間から、仲の良かった運送会社の社長に頼み込んで定期便を頂きましたので購入しました。
定期便は安定した5年契約の荷物でしたので、5年間は大丈夫と信じて購入しましたが、そこはやはり博打ですね。
契約書は5年でも、その安定した定期便が5年続く保証もないし、その定期便の荷主も5年続く保証はありません。
とは言っても、個人トラックにあこがれていた私にとっては、願ってもないチャンス到来でしたので、迷わず契約です。
ちなみに購入したトラックは、ISUZUのGIGAでハイルーフカスタム、アルミのウィング車というモノです。
参考までに色々なトラックメーカーの希望小売価格の一覧です。
個人トラック持ち込み仕事から運送会社の設立まで
新車の大型トラックで安定した定期便のお仕事をしていると、次に思うのは、1台でこれだけの運賃を上げられるなら、10台あればこの10倍の運賃を上げられるはず。
という浅はかな考え。
ここから、運送会社設立までの怒涛の日々が訪れます。
まず、一般貨物自動車運送事業の許可を取得する必要があります。
その為に必要なモノはコチラ
資金
事務所と駐車場
トラック
従業員と資格
まず最初に考えなければならないのは、『資金』=『お金』です。
一般貨物自動車運送事業を始めるにあたって準備した資金は850万円。
もちろん、トラック運転手の仕事だけでは溜められる資金ではありませんので、全て借金です。
ヘンな金融会社ではなく、商工会議所からの借金500万円と知り合いの社長さんからの借金350万円です。
事業を開始するに当たり、必要な資金を『事業開始資金』と言いますが、この資金は事業を開始する個人の口座に預金として入れておくい必要があります。
その資金には、向こう3か月程度の『従業員の給料』『事務所や駐車場の家賃』などの、必ずかかる経費を余分に持っている必要があります。
仕事があれば運賃が発生するからいらないとは思いますが、それはそれ、会社を設立するので、仕事が無い事も想定する必要があるとの事でした。
この資金に約300万位の預金を口座に入れたと思います。
次に準備するのは、事務所と駐車場です。
ここは簡単でした、知り合いの運送会社が引越をするとのことで、その場所をそのまま引き続き私が借りる事ができ、運送会社の事務所に必要な、休憩室や仮眠室、ちょっとした整備工場までついていたので、なんなくクリアです。
ちなみに家賃は15万円、これが安いのか高いのかはいまだ不明です。
次に準備するのは、仕事に使うトラックです。
そもそも1台は自分のトラックがあるので良いのですが、一般貨物自動車運送事業を行うためには、トラックを5台以上所持する必要あります。
残りの4台を確保しても荷物をもらえる保障は有ったので、さて購入と考えましたが、さすがに新車は手が届きません。
準備資金も考え、大型トラック3台と4トン車1台を購入する事になりました。
大型トラックは、長距離トラックとして使用するつもりでしたので、低床4軸が絶対条件で、距離を走っていいないもので探してもらい、見つかったのが日野自動車のプロフィアです。
これが中古車のくせに異常に高く700万円。さすがに現金で払えるわけも無くリース契約。
あと2台の大型トラックは、中古車のなかの中古車でオンボロでしたが、2台で350万円の格安。
UDのビッグサムとISUZUのGIGAで決まり。
最後の4トン車は、知り合いの運送会社の社長から35万円で譲り受け、トラックの準備完了。
次の難関は、従業員です。
運行管理者の資格を持った知り合いのおじいちゃん。整備士の資格を持った友達で資格取得者を確保しつつ、トラック運転手は、知り合いのつてを使い先輩と後輩で3名確保。これで私を含め従業員は6名確保完了。
一般貨物自動車運送事業の許可を得るには、運行管理者1名とトラック台数分の運転手5名です。
ここまでくれば準備万端。
後は、一般貨物自動車運送事業の許可の為の資料をサクッと作ってくれる『行政書士』を探せばOK。
ところが、この行政書士がなかなかいないので、これまた知り合いのつてを使い、一般貨物自動車運送事業の申請をした経験のある税理士事務所を紹介してもらい、そちらに丸投げ。
意外と優秀な税理士事務所で、こちらの準備状況が問題ない様だったのでサクッと申請まで完了。
申請に必要な書類や条件を確認しましたが、覚える気にならない位面倒な感じでしたので、申請はプロに任せるのが無難です。
全て無事に完了後、トラックについている白ナンバーが緑ナンバーに変更され、無事に運送会社としてのスタートがきれる事になります。
後は、仕事を増やすために日々営業と接待です。
仕事が安定するまでは、従業員は固定給にしていました。そちらの方が従業員も安心して働けるとの事でしたので。
ただし、運賃の振込は翌々月の月末とかなので、4月の運賃は6月の末、7月にならないと入ってきません。
それまでは、社長と専務の給料は無し0円でしたので、生活が困窮しない様に家のお金は大事に貯金しておくことをおススメします。
まとめ
運送会社を設立、起業するためにはそれなりの人脈が必要です。
運送業界に縁の無い方が、いきなり進出するのは非常に難しいです。
しかも、起業当時に給料の保証が出来ないので、それなりに理解のある友人や知人でないと従業員が集まりません。
あくまでも、個人が起業する場合の話ですよ、資金が潤沢にある方がちょっと試しにやってみようという事であれば、そんなに苦労せず起業できると思います。
もし、個人で運送会社を設立してみようかとお考えの方は、まずは資金の調達方法を確立してからにしてくださいね。